この数週間は、7月に出る新刊の準備に追われて、実に仕事ずくめでありました。その中、数日間だけ命の洗濯を許されて、北海道へ行ってきました。
飛行機に乗れば、東京からほんの1時間半。鴨川シーワールドへよりも短時間で行ける場所になりましたが、はやり言葉が変わると、「遠くへきたなぁ」と、なかなかいい気分がします。北海道には、私の親代わりを務めてくださる大学教授のご夫妻がいらっしゃるので、年に数回は訪ねます。
夏の北海道は、誠に爽やかで、もしあの厳しい冬がなかったならば、ここに日本の中心が置かれるのではないかしらと思えるほど、万人に快適な環境です。緑色の幅が広く見えるのは、空気が澄んでいるせいでしょうか、山に生える植物の種類が違うからでしょうか、とにかく山の色、木々の色が鮮やかなのです。
北国の春は、北海道に限らず感動的ですね。梅、桃、桜、れんげなどが、ほぼ同時期に咲いて色鮮やか、木々は芽を出したかと思うと、ヤレ、ソレとばかりに大急ぎで成長して日々その色を変えていきます。鳥たちも大急ぎでつがって、巣作りして、産卵。短い夏に済ませるだけの用事をすませねば……といった勢いが、あちらこちらから感じられて、生命力に満ち満ちています。
短い滞在中に、珍事がありました。ものすごいヒョウが降ったのです。大きなものは、直径2センチはあったでしょうか。「一点にわかにかき曇り」の文字通
り、アレッと思っている間に雨が降り始め、すぐにヒョウへと変わっていきました。春雷。ドラマチックな春の嵐。若葉やライラックの花をひきちぎりながら、ヒョウは10分ほど降り続きました。
季節の移り変わりは、年齢と共にその美しさと有り難みを感じるようになるといいますが、短い旅の間に、何度も四季のある国に生きる喜びを痛感しました。
(2002年6月)
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Higashi, Artless Art Studio.