Around Me


 100円ショップファンは多いことでしょう。我が家の近くにも三階建ての大きな100円ショップがあります。いつも、大変繁盛しています。ところが私、この100円ショップがどうも苦手でした。
 なぜかって?
 一言で云えば、「使い捨て文化」が嫌いなのです。使い捨て文化先進国アメリカに数年住んで、本格的に嫌いになりました。使い捨てられるもの---それは往々にして紙やプラスチックやビニールで出来ているのですが---を見ていると、どうしても作り手の気持ちが伝わってこないのです。何しろ、捨てることを前提に作っているものですからねぇ。
 100円ショップに話を戻しますと、何万点と並ぶ商品の品揃えには感心しますし、「へえ、こんなものまで100円で売れるの?」と、驚くこともあります。でも、使う方も「しょせん100円のものだから」という気持ちで使えば、作る方も「しょせん100円で売る物だから」と思って作っているのではないかしら……と、勘ぐっていたのです。
 ところが、ところが!つい最近、100円ショップに書籍コーナーやCDコーナーがあると聞いて、いってみました。その内心穏やかからず、やや前傾姿勢の挑戦的な気持ち。びっくりしました。本当に沢山の本やCD、地図までもが並んでいるではありませんか。  手に取ってみると「日本の芸能シリーズ浪曲」おお!「日本の芸能シリーズ落語」おおおお!私テイストのものが沢山……。パッケージの裏表を眺めるだけ眺めて、その場にあった「広沢虎造口演・清水次郎長外伝(1)〜(10)」と「落語シリーズ」を全部抱えて、レジへ直行、帰ってすぐに封を切りました。
 売り物のCDとしては、正直いってひどいものだと思いますが、「100円かぁ」と思うと、確かに凄い出来。100円ショップを無碍(むげ)に、否定してはいけない時代なのだなぁと、ため息と共に複雑な思いが心の底からこみ上げて来ました。
 100円ショップの企業努力は、確かに凄いものがあるでしょう。なにせ、常識なら100円で売れないようなものを100円で売るのですからね。大げさことをいえば、100円ショップが、現代の冒険、挑戦、夢の象徴かもしれません。
 でも、でも、でも……。100円ショップの偉大さを痛感した上で、改めて「品物の値段」を考えるよう、皆様にご提案申し上げたい。流通 の過当競争や外国人労働者に頼った、安い商品もいいでしょう。100円の食器や100円のマフラー、果 ては100円の老眼鏡もいいでしょう。落としても壊しても惜しくないし。でも、環境問題に対する興味や、消費者としての志(こころざし)まで100円にしてしまうのはやめましょう!
 ---あぁ、なんだか、自分で云っておきながら説得力のない意見。やっぱり、100円ショップは現代の申し子なのかなぁ?
 でも、ルイ・ヴィトンやグッチのバックの中に、100円ショップのグッズがごっそり入っているのって、やっぱり変だと思いませんか?(そういう場合はバッグも偽物なのかな?)でもそれが、現代日本を象徴する姿であって、その姿って、かなりへんてこりんだ!と思うのです。皆様、どう思われます?

(2002年3月)


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