FDL単語辞書編纂ルールなどのまとめ(JFDL version 0.92)
FDL研究会 佐藤皇太郎
1 基本的ルール(全品詞共通)
2 品詞の種類
2・1 形容詞群
2・2 副詞群
2・3 特殊名詞群
2・4 記号群
3 名詞用ルール
4 動詞用ルール
5 その他、個別事例より(重要なもの)
1 基本的ルール(全品詞共通)
- 大原則:「なるべく短く簡潔に表現する。但し、誤解を生じる可能性がある場合はこの限りではない」
- 同音異義語を区別する(「蜘蛛」と「雲」等)ため、漢字で表記できる部分は漢字で表記する。但し、難解な漢字や当て字は、ひらがなで表記する(「鉞」→「まさかり」、「畔」→「ほとり」、「欠伸」→「あくび」等)。
- 漢字の送り仮名は、短いものを採用する(「現われる」→「現れる」等)。
- 『類語国語辞典』(角川書店)を、単語のクラス分類(グループ分け)の基準に採用する。未収録単語は、その単語の(昔話・物語の中での主たる)意味を元に、『類語国語辞典』中の最も近いと思われる単語群に分類する。
- 一つの単語が、複数の意味を持っている場合は、「昔話中で使われない意味」については、無視して良い。例えば、「山」は、類語辞典の
032「地勢・地形としての山」の意味では使うが、「今晩が山です」(157c「物事の盛りあがった頂点」の意)という意味では使われないので、無視できる(157c
に登録する必要はない)。
- 一つの単語が、複数の単語クラスに属することがある(「婆」は「”女」にも「”老人」にも属する)が、これは主にOFDA(検索システム)上で対応すべき問題。当面
は、各単語がどこか1つの単語クラスに属せば良い。
- FDLは、昔話の構造分析を目的としているが、イメージ研究等にも応用できるようにしたい。構造分析的には省略できそうな詳細な意味を伴う単語でも、初めて出てきた行のみ「#コメント」にて解説を加える。
(例)娘 刺す 針 >男。着物。裾 #縫い針
2 品詞の種類(「動詞」と「名詞」以外に、以下の品詞がある)
2・1 形容詞群 … 形容詞・形容動詞等の形容詞的な単語グループ。体言を修飾する。
「良い」「有難い」「美しい」「かわいい」「白い」「短い」「見事」「綺麗」「一人暮らし」等。例えば「貧乏」は一般
には名詞だが、昔話中では「貧乏な(若者)」という具合に形容動詞として使われることが多いので、「貧乏」は形容詞群に入れておく。「らしい」(接尾形容詞)や「ふさわしい」も、形容詞群に含む。
2・2 副詞群 … 副詞グループ。用言を修飾する。
- 「$時間」副詞 …「年月日時分秒や朝昼晩・春夏秋冬」という字が含まれている単語(「早朝」「日暮れ」「丑三つ時」「毎日」等)。又はそれに近いことを表している単語。一般
に「$時間=○○、」として使う。
- 「$副詞」副詞 …「$時間」副詞以外の、用言を修飾する単語(「いつも」「一生」「何度も」「初めて」「急いで」「だんだん」「むりやり」「ずんずん」「同時に」等)。一般
に「$副詞=○○、」として使う。
2・3 特殊名詞群
- 前置詞的名詞 … ヨーロッパの言語では前置詞となる「上」「中」やそれらに近い「周囲」「はずれ」等。「1。から。11。まで。蔵」というときの「から」や「まで」や、「3。日。後」というときの「後」や「以内」「間」等も含む。
- 助数詞 … いわゆる「単位」のこと。「両」「反(たん)」「里(り)」「回」等。
- 序数 …「1」「2」「3」~ といった数字。「1半」等も含む。算用数字を使う。
- 序数付名詞 …「一月」~「十二月」や「一日」~「三十一日」等(但し、「一番」は副詞群とする)。序数+名詞だが、序数部は算用数字ではなく漢数字を使うので注意。
2・4 記号群 … 各種記号については「FDL記号一覧」を参照のこと。
3 名詞用ルール
- 丁寧な表現にするための接頭辞(接頭語)の「お」や「ご」は、一般には省略するが、意味が分かりにくくなる場合は省略せずに、ひらがなで表記する(「お金」「ご飯」「お堂」等)。但し「御殿」は一つの単語とする。
- 複数の要素に分解できる単語のうち、頻出単語は、一つの単語として登録(「川上」「大蛇」「縁の下」等)。
- 動詞が形容詞的に名詞を修飾して名詞を作っている場合、または動詞が行為を表す名詞として使われている場合には、動詞部の送り仮名を振る(「空き家」「溜め息」「刈り入れ」)。但し、衣類を入れる櫃は「長持」。
- 地名の固有名詞は、FDL中では「#コメント」として記述するので、単語辞書に登録する必要は無い(「諏訪湖」なら、単語辞書に登録するのは「湖」)。但し、人名の固有名詞については登録。
4 動詞用ルール
- 原文で語られている動詞をそのまま写すのではなく、その場面で語られている「内容」を表す動詞を選択して使用すること。特に「言う(…と言いました)」は会話内容に注目し、「依頼する」「命令する」等に置換する。
- より意味を明確にし検索時にミスヒットを減らすために、動詞の一部を成す「付く」・「付ける」や「回る」等は漢字を使う(「見付ける」、「動く。回る」、「寝込む」等)。なお、「なくなる」は「無くなる」とする。
- サ変動詞については、「する サ変名詞」ではなく「サ変名詞する」と表記する。例えば、「する 掃除」では目的語を伴えないが、「掃除する」ならば「掃除する 部屋」という具合に目的語を従えることが可能になる。
5 その他、個別事例より(重要なもの)
- 「一番早く、」は「$副詞 = 一番。早い、」と記述する。
- 「$時間 = ○○。以内、」には、暗黙の「に」が含まれているので、「以内に」と記述する必要はない。
- 援助者からの一般的なセリフ「こういうふうになるから」「こうしなさい」のFDLにおける表記法。
援助者 言う >主人公等 (「こういうふうになるから」)
援助者 依頼する >主人公等 (「こうしなさい」)
- 「あぜ」は「畦」と表記(「畔」は「あぜ」とも「ほとり」とも読める)。なお「ほとり」は、ひらがな表記。
- 「子供」(一般の若年者)と「子」(親に対する子)、「地面」(土地の表面)と「土」(物質)は別
単語として登録。
- 「者」→「人」。「何日」→「数日」。「両親」→「父母」。「倉」→「蔵」。「おとも」→「御供」。「旅行する」→「旅する」(観光以外の「旅」も含む)。
- 類語辞典には無いが「異類」(514a「乙姫」や 569「山男」)や「昔話用語」(「姥皮」)というクラスを作るか?
「昔話記述言語(FDL)の研究」ホームページへ
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